リク&花子「子を守る姿に母猫の強さを学んだ」
14年前、最初に一緒に暮らすようになったのはリクで、程なくして、知り合いの家の庭でノラ猫が子猫を生んだと聞きつけまして。会いにいったら、そのなかに三毛柄で綺麗なグリーンの目をした花子がいたんです。一目惚れして即決、引き取ることを決めました。もともと私の実家では、物心つく前から捨て猫や犬、金魚などたくさんの生き物がいたので、猫が2匹に増えることに抵抗はなく、それはごく自然な流れでした。
── 2匹の猫たちはすぐに仲良くなれたんでしょうか?
はい。14歳になったいまも仲良しですよ。たいていリクの方から遊びをしかけてますね。でもリクがしつこいからケンカに発展することも(笑)。寝室に置いているカドラーに並んで寝てたり、ベッドの上で寄り添っていることもあります。
花子ちゃん
リクは人が好きで、警戒心がないせいか、知らない人にも近寄ってスリスリするんです。床に寝そべっているリクの横を通ってもピクリともしない、物怖じしない子。逆に花子は、甘えん坊なのに臆病。いじめられた経験はないのに人を警戒しているんです。もしかしたらノラのお母さんに教えられたのかも(笑)。性格が真逆の夫婦ですね。
── リク君と花子ちゃんはすぐ“夫婦”になったそうですが。
去勢手術をするタイミングを待っていたら、出会ってすぐに妊娠。花子が生後7ヶ月ころでしたね。いつものように花子を抱っこしたら、お腹が大きくなっていることに気づいて! 病院でエコーをとったら4つ子がいたんです。花子はまだ若くて体が小さかったので、子どもがお腹のなかで大きくなりすぎると、母子共に命の危険があり、その場合は緊急帝王切開になると。出産時は、絶対に立会いが必要だと言われました。
兆候として出産日は体温が上がると聞いていたので、毎日花子の体温を測り、少しでも上がると私は仕事を休む日々……。“いざ本番”の日は明らかな体温上昇があり、花子も苦しそうで、いよいよ来たんだとすぐにわかりました。
── そして緊張の瞬間……。
出産は自宅でしたんですが、スムーズに進み、無事に元気な4匹が生まれました! 私はというと、病院で教えてもらったとおりにへその緒を切り、花子が食べようとする胎盤を取りあげた(下痢をするため)くらいで、あとはすべて花子がやり遂げました!
産後の花子は、子猫が心配すぎてトイレはおろか、ご飯も食べないのでガリガリに痩せて、きれいだった毛はバッサバサに。自分のことよりも子猫を守っていくその姿は、強い母親そのものでした。はい。私の人生において花子の出産は“大きな出来事”でした。私自身が昨年、男の子を出産したということもあり、いまさらながら花子の母親としての凄みを感じています。誰かに教えてもらったわけではなく、こんなに小さな体で出産して子育てをして……。本当に感激でした。猫の出産は賛否両論ありますが、私は生ませてあげられて良かったと思っています。猫の出産を推奨するわけではありませんが、幸せそうに子猫を舐めている花子を見たとき、生ませてあげられて良かったなと思いました。命を繋ぐことは本能であり、自然な事でしょうから。
── 花子ちゃんが子育て中、お父さんになったリク君は?
花子と子猫のいる段ボール箱を一生懸命覗きこんでいました。自分の子どもだという自覚があったのかなぁ。
── 生まれた子猫たちはいまどちらに?
4匹ともうちで一緒に暮らそうと思っていたんですが、2匹は私の実家に、ほかの2匹は良い飼い主さんたちにもらわれて、いまでもとても可愛がられています。
息子のおもちゃのサークルのなかにリクも入って遊んでますよ(笑)。あとは息子がリクのことをそっとなでることも! でもリクはお腹を触られるのが嫌いなので、息子にキックをしてましたけど(笑)。花子は息子の泣き声が苦手なんですが、リクはもともと両耳が聞こえないのでへっちゃらみたいですね。
── 表情やしぐさなどを見ても、耳が聞こえない雰囲気はしないんですね。
2匹ともいま14歳で腰が悪くなってきたし、歳をとりましたねぇ。昨年12月に花子は腎不全になり、今は2週間に1度通院。リクは子猫のころから肝臓が悪かったのと、最近は首に脂肪腫ができました。悪性ではないから、経過をみているところですが……。長生きしてもらいたいなぁ。私が“飼い主”として暮らした猫はこの子たちが初めてなので、この子たちがいなくなるということは、子どもを失うような気持ちになるのではと考えてしまうことがあります。
── 最後に、岩田さんにとって2匹の猫たちはどんな存在なんでしょうか?
家族ですね! 一緒にいることがとても自然。息子にも私と同じように猫好きになってもらいたいですし、いつかみんなを腕枕しながら寝たいです。
Interview, Edit: Tomoko Komiyama / Photograph: Jun Takahashi
0コメント