Kiyomiさんと七海ちゃん「かけがえのない家族」
穏やかな表情をした秋田犬の七海(ななみ)ちゃんは、動物愛護団体出身の元保護犬。大きくてふわふわな毛につぶらな瞳で、家族だけでなく出会う人々を和かにしてくれます。出会ったきっかけや、七海ちゃんとの暮らしぶりを伺っていると、そこには人も犬も一緒に成長していく家族の様子がありました。
気持ちを察する犬
── 綺麗な長毛ですね。七海ちゃんのような毛の秋田犬は珍しいのではないですか?
そうですね。七海は虎毛と言うんですが、いわゆる柴犬のような白と茶の子が一番多くて、ほかに白、黒虎もいます。七海は今20キロくらいなのですが、秋田犬はもっと大きいんですよ。
── お散歩中も穏やかでしたし、室内に私たちが入っても警戒する様子もありませんでした。
七海は自立しているというか、わりとマイペースなほうかも。掃除機も嫌がりませんし、お客様が来てインターホンが鳴っても吠えません。一度、お散歩に出た際にセコムを誤作動させてしまったことがあって、連絡が来て慌てて帰宅したらセコムの方がすでに家の中にいらしたんですけど、七海は吠えるどころかしっぽをふわっと振ってました(笑)。セコムの方も私もびっくり(笑)。
── さきほどはちょうど七海ちゃんのごはんタイムでした。ドックフードのほかにヨーグルトもあげているんですか?
手作りのカスピ海ヨーグルトを。本当はすべて手作り食にしたいんですが、七海は膵臓が機能していないので、食べ物は気をつけているんです。グルテンフリーで低脂肪、穀物、油も消化しづらいんですよね。
── 膵臓が機能していない、というのは?
消化酵素が出ないので食べても栄養が身にならないんです。それを補うために人間用の消化酵素を与えています。というのも、1歳のころ胃腸炎になって、そのあと肝臓、膵臓と立て続けに悪化してしまって。そのときは体重が半分まで落ちてしまったんです。(※2017年6月、漢方とマッサージの効果があり、長く続いていた咳の少しずつ良くなりこれを機に手作りご飯に移行中。)
── 元気そうな見た目からはわからなかったけど大変だったんですね。
こう見えて七海はまわりの空気を読むというか、気を使う子なので、ストレスでおねしょをしてしまうこともあるんです。
── 意識的にではなく、寝ている間にしてしまうんですか?
そうなんです。血液検査で腎臓の数値が良くなかったとき、おねしょも続いたので、心配になって獣医さんに相談したんですね。そしたら「おそらく精神的なものだと思います。Kiyomiさんが明るく楽しくご自身の生活を楽しんでくれたら、大丈夫だと思いますよ」って。
── 七海ちゃんではなくて、Kiyomiさんの気持ちの問題? 思い当たるふしはあったんでしょうか。
私、心配性なんです。「ああ、どうしよう。大丈夫かな、大丈夫かな」ってぐるぐる考えがちで。思い返せば、七海のおねしょが続いたときは、息子の学校生活が変わって、私の生活にも変化があったときだったんです。
─ Kiyomiさんの気持ちを七海ちゃんが察しているんですね。
私が体調を崩すと七海も体調を崩したり、私と七海の気持ちがシンクロすることが多かったんです。だから私が元気で明るくいなきゃって。私自身がちゃんと生活を楽しんで「七海、付いておいで!!」って言える関係になることがベストなんですね。
病気が治ったら、犬と暮らそう
── 七海ちゃんは動物愛護団体ランコントレ・ミグノンから譲り受けた元保護犬です。そもそもKiyomiさんはなぜ犬を飼おうと?
子どものころから大型犬と暮らすことが夢だったんですが、主人が動物の毛にアレルギーがあったので、犬を飼うのは基本“なし”だったんですね。なのになぜ犬を飼うことになったかと言うと…、私が病気をしたからなんです。病気がわかったとき、私はショックで泣いてしまって。そしたら主人が「元気なったらわんちゃん飼おうか」って言ってくれたんです。当時、それは“励ましの言葉”くらいに捉えていたんですが。
── では七海ちゃんに出会ったきっかけは何だったんでしょうか。初めから保護犬を探されていたんですか?
手術と治療を経て、退院後に知り合いが経営しているカフェにランチをしに行ったのが、保護犬を知ったきっかけなんです。そこには看板犬の綺麗なボーダーコリーの男の子がいて、その子が保護犬で。私が「かわいい、かわいい」と連呼していたら「Kiyomiさんも、もしペットを飼うなら保護犬をぜひ」ってミグノンさんを教えてくれたんです。ホームページを見てみたら、七海の写真が目に飛び込んできて…。
── 初めて七海ちゃんを見たときの印象は?
がーん!と一目惚れです。写真を見たら息子も「会いたい! 飼いたい!」と。2週間言い続けていたのでついに主人も折れて、譲渡会へ行くことにしたんです。当初は、会いに行くだけのつもりだったんですが、会ってしまったら最後、里親の申し込みをし、トントン拍子に話が進んでトライアルへと。幸い主人のアレルギーも出なくて本当によかったです。(ミグノンに掲載されていた写真はこちら。
── 七海ちゃんは今何歳になったんですか?
3歳半くらいです。2014年の4月に会ったときに4ヶ月と言われたので、12月をお誕生日にしました。息子が「22日がお母さんたちの結婚記念日で、24日がクリスマスイブだから、七海の誕生日は23日にしよう!」って。お祝い続き。七海の名前も息子が率先して付けたんですよ。姓名判断もしました。
息子さんが夏休みにつくった自由研究「秋田犬七海について」。
このころの七海ちゃんは12.5kg。七海ちゃんも息子さんもまだ小さい。※引用:Kiyomiさんのインスタグラム
Kiyomiさんのうちに来て2ヶ月。初めてトリミングに行った翌朝。※引用:Kiyomiさんのインスタグラム
初めて会った瞬間から七海ちゃんと意気投合したヌーサ君。「七海と遊べる子がいた!」と感動したご主人が、思い切って飼い主さんに声をかけて以来、友だちに。
愛おしい瞬間
── 七海ちゃんのしつけはどんなことをされたんですか?
ミグノンさんに紹介してもらったドッグトレーナーさんのところで2クール(10回×2)トレーニングを受けました。「マテ」「フセ」「ハウス」「オイデ」、ほかにもカフェなどで大人しくできるようになど。七海は穏やかな子ですが、秋田犬の闘争本能というのはあるので、そこは飼い主として忘れないようにしています。
── 七海ちゃんに手を焼いてしまうことなどはありますか?
全然手はかからないんですが、和犬気質なのか、他のワンちゃんとあまり遊ぼうとしないのとご挨拶もあまり得意じゃないので、飼い主としてはそこが少し寂しいですね。あと、七海はマイペースですがまわりに気を使う子なので、先に気づいてあげたいなあとは思います。嫌なことがあっても我慢しちゃうので…。
── Kiyomiさんのインスタグラムを見ると、旅行なども七海ちゃんと一緒に行かれているようですね。
はい。七海は車に乗るのが大好きなので、出かけるときはひとりでいそいそと助手席に乗り込むんですよ。後部座席より助手席派。ハーネスにシートベルトを通して固定すると、おねえさん座りとかしちゃって。信号待ちの間、前方の人に「んっ!?」って凝視されてます(笑)。
── 大きさも人間みたいですし。
そうそう(笑)。人みたいでおもしろいんです。七海って“間”がおもしろいんですよ。本人はいたって真面目なんですけど、笑いを誘う子なんですよね。
── かまってかまって!というタイプではなさそうですね。
七海の甘え方は静かなんです。リビングで七海が寝ていて私と目が合うと、撫でて欲しくてお腹をくるっと見せることがたまにあるくらい。可愛いし、愛おしいですね、控えめな愛情表現がなんとも。
七海のおかげで世界が広がった。
── 七海ちゃんがKiyomiさんのうちに来て、生活にはどんな変化がありましたか?
もともと家族の会話は多い方なんですが、そこに七海の話題も加わっていっそう賑やかになりました。あと、交友関係が広がりました。七海とお散歩をしていると、いろんな方に話しかけられるんです。おかげで出会いが増えて、世界が広がりました。七海がいなかったら、私はずっと家に引きこもっていたかも…。
── それはKiyomiさんのご病気のことに関係して?
そうですね。毎日一緒にお散歩をすることで、私の体調はどんどん回復しましたし、後遺症もなかったんです。本当にありがたいですね。七海が今こうしていてくれることは“運命”なのかなって思うんです。ミグノンにいたときも里親希望者はたくさんいらしたそうなんですが、条件の合う方がいなくて決まらなかったとか。
── 来るべくして来た運命の子なのかもしれませんね。最後に、Kiyomiさんにとって七海ちゃんはどんな存在でしょうか?
家族ですね。「うちは4人家族です」って言いたくなるんです。息子の学校に提出する書類にも、七海の名前を書きたくなりました(笑)。主人に甘えている七海の姿や、妹や弟を欲しがっていた息子が七海を可愛がっている姿を見ると、とても幸せな気持ちになります。私たちにとって七海は“うちの子”で、ただそこにいてくれるだけで幸せですし、癒しでもありますし、大切な宝物です。
DOG’S PROFILE
七海(ななみ)ちゃん
2013年12月23日生まれ / 雌
OWNER’S PROFILE
Kiyomi(きよみ)さん
東京都在住。専業主婦。2014年 動物保護団体ランコントレ・ミグノンが保護した秋田犬の七海ちゃん(幼名・耳印)の里親になる。かつて日本料理屋を経営し女将をしていた経験があり料理が趣味。現在は犬の手作り食を習得中。
インスタグラム @love.nanami_1017
Interview, Edit: Tomoko Komiyama / Photograph: Jun Takahashi
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