大日方久美子さんとキャンディ、JIRO「いつも私を支えてくれる存在」
ファッションパーソナルスタイリストとして幅広い活躍をしている大日方久美子さんと暮らすのは、ケアンテリアのキャンディちゃんとシュナウザーのJIROちゃん。じつはこの2匹、もともとは繁殖犬と保護犬でした。「2匹はいつも私を支えてくれる存在」という大日方さんに、それぞれとの出会いから、多頭飼いで気をつけていること、犬たちと心地よく暮らすヒントを伺いました。
隅っこの小さなケージの中で。
── キャンディちゃんとJIRO(じろう)ちゃん。それぞれの出会いから教えてください。
最初に来たキャンディは、犬のレンタルや譲渡、仔犬販売、タレント犬を育てることなどをしているところがありまして、そこで出会いました。キャンディは繁殖犬だったんです。2回くらい出産をして、もう産めないからと引き取り手を探していて。
── 大日方さんはなぜそこへ?
私はというと、自分が犬を飼えるかわからなかったので、まずは見てみようと出かけたのがその場所だったんです。でも行ったら最後、レンタルなんて気持ちは毛頭なくなり「あの子を引き取ります!」とキャンディを選んでいました。
── その時、キャンディちゃんはどんな様子だったんですか?
犬がたくさんいるスペースの、一番奥の一番下の小さなキャリーバッグのようなケージに入れられていて、黙ってじっとこちらを見ていました。人気のある犬種は手前の大きなケージにいたんですが、キャンディはケアンテリアという犬種で、人気がないからなのか、本当に隅っこのほうに。
── いつごろのことなんでしょうか。
2013年の12月ですね。キャンディは今7歳なので4歳のときにうちに来たんです。JIROは去年引き取ったのですが、当時推定7~8歳と言われていました。
── JIROちゃんも引き取ったということは?
JIROは保護犬なんです。ある日、犬の保護活動をしている友人から写真付きのメールが来て、「シュナウザーが保護されているんだけど、誰か飼ってくれないかな?」って。それを見て「私が飼うから大丈夫!」って二つ返事で即決。動物愛護センターに収容されたJIROを、川崎市の動物保護団体パウパッズが引き出して、東京の里親さんが預かっていたんです。
── もともとは動物愛護センターに。
はい。愛護センターに入る前はどうやら虐待されていたようで。その名残なのかJIROは今でもケージに入るのを怖がるんです。
── 突然JIROちゃんがやって来て、キャンディちゃんとは仲良くできるものなんでしょうか。
結果、何も問題なかったんですが、最初は心配していましたね。というのも過去に一度だけ、友人のわんちゃんを家に連れてきたときに、キャンディが凄い剣幕で怒ったことがあったので。もうね、「ぶっ殺す!」くらいの殺意で飛びついたんですよ。
── 今の大人しい雰囲気からは想像もできないです!
キャンディは穏やかなので、後にも先にもその1回だけですけどね。そのことがあったから、初めてJIROに会いにいくときはキャンディも一緒に連れていきました。キャンディのリードを離し1時間くらい2匹の様子を見ていたら大丈夫そうだとわかったので、そのあとJIROを家に連れてきたんです。
── 今日お会いして驚いたんですが、2匹ともすっごく人懐っこいですね。
そうなんです。それにすごく甘えん坊。大抵おとなしい2匹ですが、遊びだすとガウガウ噛みつきあってじゃれたりもするんですよ。
保護犬を飼うという選択は自然なこと。
── 大日方さんは犬を飼うときに仔犬が良かったという希望はなかったんですか?
ありませんでしたね。本当は、保護された犬であればできる限り引き取りたいという気持ちでいっぱいです。今は2匹が限界ですが、もう1匹保護したいので引っ越しを考えたりも。大型犬は引き取り手が少ないと聞くから、庭があったらいいだろうなぁとか。
── そこまで考えていたんですか!
“捧げてる感”はないですよ。自然なことです。私が子どものころは、家に警察犬になれなくて引き取ったシェパードがいましたし。もともとそういった思想はあったのかもしれませんね。だから生態販売をするペットショップは早くなくなってほしいし、生態販売をする国もなくなってほしい。「保護犬・猫を引き取るのなんて当たり前じゃん」という世の中になったらいいなと思いますし、私にできることはしていくつもりです。
── 犬が2匹になって大日方さんの気持ちの変化はありましたか?
幸せが倍になった!! 大変なことよりも幸せのほうがずっと多いです!
── 本当に幸せそうですね。どんなときにそう感じますか?
起きた瞬間から! 私と彼は1日に100回くらい、キャンディとJIROに「かわいい」とか、「このかわいさは天才的だね」って言ってるんです(笑)。どんな瞬間も、いつでもかわいいの。キャンディなんて、彼が出かけると玄関のところへ行ってジッと待ってて。もう、その姿にキュンとしちゃって! 写真を撮って「キャンディが待ってるー!」って送るんです(笑)。犬ってこちらが愛情をかけると何倍にもして返してくれるんですよね。
── 大日方さんが2匹から教わったことはありますか?
無償の愛の大きさとか、素直さとか、無防備の可愛さとか(笑)。一緒にいると1分ごとに愛をくれるんです。2匹といると愛情って尽きることがないんだなって感じますね。
モヒカンと洋服。
── 多頭飼いで気を付けていることはありますか?
ゴハンをあげる順番やかわいがったりする順番も、“キャンディが先”ですね。ただJIROも私たちにべったりなので、キャンディの次はJIROにベタベタしにいきます(笑)。あと気を付けていることといえば…、キャンディの体重でしょうか。
── キャンディちゃんの体重? 太りやすいとか?
最近は「たぬき?」なんて言われちゃって(笑)。ずっと理想体重だったんですが、私たちがちょっと洒落っ気づいて、犬たちのゴハンをすべてオーガニックフードに変えたら太ってしまって。そこから痩せないんです。お散歩で会う人にも「1匹はシュナウザーで、もう一匹は……?」って(笑)。
── シュナウザーなどの長毛種は、ヘアスタイルを変えたりする飼い主さんも多いですが、大日方さんはどうですか?
トリミングは定期的に行きますが、モヒカンみたいなカットとかそんなに興味ないんですよね。あと、私たちは週末に海に行くんですが、キャンディとJIROももれなく必ず汚れるので(笑)。サーフィン後、ウエットスーツを着たまま2匹をお風呂に入れちゃってます。洋服を着せることもないですし、誕生日だからってケーキをあげることもありませんね。普通がいいです!
── ナチュラルなんですね。
あ、でも、そんなこと言ってますけど、まだキャンディしかいなかったときに一度だけ彼が、犬用のクリスマスおやつセットをあげたことはあるんです(笑)。お肉の塊。キャンディは最高っぽかったですよ(笑)。
2匹のおかげで世界が広がった。
── 犬たちと暮らすようになって大日方さんのライフスタイルに変化はありましたか?
犬が来たことで今まで私の生活の中にはなかった“散歩”ができて、それによって新しい出会いがありました。お散歩中にいつも会う人と挨拶を交わせる、それだけで嬉しい気持ちになりますよね。犬たちを通して仲良くなって、ご飯を食べに行くような仲になった人もいます。
── お散歩がなければなかったことですね。
2匹のおかげですね。2匹と暮らすようになって、うちの子だけじゃなくて、どの犬もかわいく見えるようになりました。もちろん犬だけじゃなくて猫も。動物がかわいくてしょうがないですね。
── そこまで思わせる理由は何なのでしょう。
犬たちが私を支えてくれるんです。仕事で失敗して、人間関係がうまくいかなくて、自分なんて人に必要とされてないなって思うこともあったりするんですけど、家に帰ってくると2匹が出迎えてくれる。「キャンディとJIROには必要とされているかな。がんばろ!」って思えるんです。もう、この子たちがいないことなんて考えられない。2匹との暮らしは何にも代えがたいです。
── 大日方さんにとってキャンディちゃんとJIROちゃんはどんな存在ですか?
家族です。それから、私と彼の宝物ですね。動物こそ人を豊かにしてくれると思いますし、私が何を考えているか読み取ろうとするし。……先生みたいなかんじかな。
── 2匹は先生!?
「保護犬を助けたー」なんて思ったのは一瞬。もう100倍くらい私の方が助けてもらってますから。JIROが甘えてくれるから、私はお母さんのような気持にもなれたし、自分の中から湧き出てくる「好き」という気持ちを、なんの躊躇なくぶつけられる。それは私の精神衛生上すごくいいこと。
── 心を解放できるんですね。
犬を飼うまでは、犬に赤ちゃん言葉で話しかけてる人って大丈夫かしら?って思っていたんです。うちがもともとシェパードがいたからってこともあるかもしれないのですが、そういう人に対して、どこか子供っぽいなって思っている自分がいて。でもね、キャンディを引き取ってすぐですよ。コロッと! 私も“犬に話しかける女”になりました!
DOG’S PROFILE
キャンディ 2009年4月 生まれ/雌
JIRO(じろう)推定8~9歳(2016年)/雄
OWNER’S PROFILE
大日方 久美子(おびなた くみこ)
ファッションアドバイザー/ パーソナルスタイリスト
様々な業界を経て2013年に独立。現在はファッションアドバイザーとして、企業とのコラボレーションやパーソナルスタイリストとして活動中。著書に「“エレガント”から作る大人シンプルスタイル」(KADOKAWA)がある。
Instagram @kumi511976, http://ameblo.jp/findyou-kumi/
Interview,Edit: Tomoko Komiyama / Photo: Jun Takahashi
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